2008年5月1日木曜日

凛ちゃんの毎朝。

No.217

 凛ちゃんは朝が苦手だ。できることなら、もっともっと寝ていたい。

けたたましい目覚まし時計の音を聞いても、彼女は布団にもぐりこむ。

もしかしたら、弟の夜鳴きが彼女の眠りを浅くしているのかもしれない。

とにかく、もっと寝ていたい。

 去年入園した幼稚園は楽しい。友だちもたくさんできた。先生も好きだ。

だから、幼稚園に行くことを思えば、起きることも苦ではないはずだ。

実際、そう思って自身を奮い立たせてみたりもした。

だけどそれ以上に、ぬくぬくとした寝床の心地よさが、

凛ちゃんにとっては勝っているのである。

 母親の声に促され、やっとの思いでベッドを抜け出す。

点けられたテレビから流れるニュースの意味は、

4歳の彼女にはまだわからない。

その雑音が、彼女のまぶたをさらに重くさせている。

ぼーっとしている凛ちゃんに、

「着替え」、「トイレ」、「朝ごはん」、「歯磨き」・・・。

両親から次々と行動の催促が飛んでくる。

「そんなにうるさく言わなくても、なんとかなるよ」。

凛ちゃんは知っているのだ。

彼女ががんばらなくても、周りががんばってくれて、

自分はそれに身を任せていれば良い。

そうすれば、楽しい場所にバスが連れて行ってくれる。

あとは、友だちや先生、犬のムクとの楽しい時間が待っている。

朝のこの騒ぎを乗り越えさえすれば。

 でもこのごろ、それも長くは続かないかな、と、

ある種の危機感も察知し始めている。

今年の初めに弟が産まれてからというもの、

それまで手伝ってくれていた親の手も減った。

自分でやらなきゃいけないことが増えた。

これが、周囲の人が口々に言う「お姉ちゃんになる」ということなのか。

「なによ!この間まで、手伝ってくれてたじゃない!」

そんな言葉を発したいのだが、

まだ完全に覚めていない身体には、それすらも億劫だ。

仕方がないから、そんな言葉をもパンと一緒に飲み込む。

そして、お弁当の時間まで遊ぶのに必要なエネルギーだけを補給する。

あまった分は、父親の仕事のエネルギーにしてもらう。

エネルギーが補給されると、ようやく頭が回り始める。

「今日は何をして遊ぼう?」凛ちゃんの心は、

歯磨きよりもさらにその先を見ている。

慌しさの波をそうやって乗りこなしながら、

今日もお迎えのバスに流れ込んでいく。

バスが向かう先には、今日も友だちや先生、犬のムクが待っている。

その時、凛ちゃんはようやくアサイチの笑顔を見せる。

2 件のコメント:

Malissa さんのコメント...

私も朝弱いので凛ちゃんの気持ちがよ~くわかります。

Ken Tachibana さんのコメント...

masakoさん、どうも。
まぁ、かく言う私も朝は大苦手なのですがねw。
某講座に提出した文章をブログに乗っけてみた次第です。